Hi-Tech頂上決戦 2020~2021
去年の春か秋のM3後のサイゼリヤで、
— J.K(Joe.K) (@JKxvi) 2020年10月29日
ボニアとダスボがHi-Techについて熱く語っていた時があって。
当時はスマホでちょっと聞いて、サイケなハードテックみたいな音楽って認識でディグしてなかったんだけど。
最近暇だったのでディグしてみたら、想像を絶する最高過ぎる音楽だったので、毎日聴いてる😘
昨年に引き続き、世界的にハイテックの拡大が止まらず!
世界各地から新レーベルが次々に勃興し、筆者が把握しているだけでも40は超えるレーベルが世界各地に点在しており、月に2~3個コンピレーションが出、常連のアーティストもみんな精力的な上、新しいアーティストも死ぬほど増えるわなのに、このただ事でない状況を日本語どころか他のメディアでもまとめている情報元はほぼ無いに等しいので、このような記事が少しでも皆さんのDigの手助けになればと思います。
- Multidimensional Music
- Black Out Records
- Warromaja Records
- O.V.N.I Records
- Hypnotic Tribe Records
- osom-music
- Synetic Records
- Hyprid Records
- Damaru Records
- Shamanism Records
- Lyserjunks Productions
- おまけ:ハイテックの歴史は始まったばかり!
レーベルは独断と偏見で並べております。筆者の好みで一部楽曲を深く語ったりしていますが、あまり真に受ける必要はないです。筆者が観測していて直近の活動があるところだけでも増えに増えて40個近くになってしまったので、ちゃんとしたレーベル紹介はまた別の機会にやろうかと思います。アーティスト紹介もちゃんとやりたいな・・・
2019年頃まではNoise PoisonやKamino Recordsなどが活発に活動していましたが、2021年末現在はメキシコのMultidimensional MusicとドイツのBlack Out Recordsがほぼ現状のシーンの最先端を作っている印象で、リリース量も多くクオリティも高いので、先に長々と紹介しちゃいます。とはいえ全世界にレーベルが点在しており、アーティストのお国柄も様々=レーベルカラーや作風も様々なので、この2レーベルはほんの氷山の一角です。
以下、音源はSpotifyにあるものはSpotify優先、なければBandcampのリンクを貼っていきます。ぜひプレビューを聴きながら読んでみてください。
前の記事でも書きましたが、Dig自体はほぼBandcamp&Spotifyで十分だと思います。公式サイトがあるところもありますが、どこも音源はBandcampで発表しています。アーティスト自身が発信する先行情報やフェスの情報など更に突っ込んだところはFacebookやInstagramで追っかけるのがよろしいかと思います。
Multidimensional Music
multidimensionalmusic.bandcamp.com
- レーベル:Multidimensional Music
- 国:メキシコ
- 公式サイト:https://www.multidimensional-music.com/
2020年8月から2021年12月の1年ちょっとで、月に1~2枚コンピレーションやEPを出し続け通算20枚。主催のArcekの、シーンを引っ張っていくぞ!という全力投球を感じます。
とにかく全部オススメです。Multidimensional MusicとBlack Out Recordsは一定以上のクオリティを保ったリリースばっかりです。一部かいつまんで紹介しますが、本当にほぼ捨て曲がないんです。これは他のレーベルにも言えるんですが、すごいことだと思います。
ロンTやパーカーなどマーチャンダイズも充実しているので買うといいと思います。何か立方体の変な段ボールに入ってちゃんと届きます。
V.A - Descent of Kukulkan
blaster banger hi-tech bomb tracksのみらしく、実際そうなっています。おすすめは
Behind Language (Insector & Kokobloko) - Believe In、 Deadhead, Plasma - 初号機あたりですかね。
V.A - Energy
MentalEcho, Apollyon - Scum Islandがヤバい。"Greetings, Human...welcome to the scum island...artificial intelligence created..."という声ネタ(SCUM on Steam?)で始まり、銃弾ですか?みたいな鋭く重いキックベースにクリアな200bpmのレーザーノイズが矢継ぎ早に応酬しています。Apollyon特有の攻撃性が全面に出ている傑作。後で紹介するSpiralのアルバムのキックベースに近いものもあります。
V.A - Toxic
Macrodoseはここで初出!ロシアのCritical Selection - Paradigmaの後半パートのアシッドの畳み掛けが踊りまくれて最高!書いていて気づいたんですが、今聴くとPyrokine - Melodyが後述するSpiralのアルバムの曲「Spiral, Pyrokine - We make music not noise」にしれっと転生してますね。。wキックベースもアップデートされていて流石にアルバム収録バージョンのほうがいいですね。こういう向上心は素敵です。
Saavage & Digital Burst - Psycho Report - EP
キックとベースの音圧が独特!低音バチバチ出てるのに不思議と軽やか。2曲とも全体的にギラついたサイケデリック遊園地のような悪い音空間が広がります。
Psycho Reportは中盤に、ビートがいきなり途切れて今まで辿ってきた世界が実はモニター内の世界であることが明かされるような驚きの展開がありました。今回初登場となるSaavageは20年近いキャリアを持つMad Hattersの別名義らしく、音にも貫禄がありますね。Gen-OhmとよくやってるSavageとは別人です。
V.A - Electric Kool-Ade
タイトルは、「Electric Kool-Aid Acid Test」(ヒッピーカルチャー、ビート・ジェネレーション世代を牽引した「カッコーの巣の上で」の著者であるケン・ケイシーが、ファンキーなバスに乗ってドラッグをやりまくるノンフィクション小説)
と、ジャケットはそのタイトルの元になっているアメリカのポピュラーな粉末ドリンク「Kool-Aid」のロゴをあしらったものですかね。ハイコンテキスト!
おすすめはPyrokine - Insane, Macrodose - Syncronized Chaos, Supersonics - Electric Kool-Ade, Deadhead - Unifyingあたりですね。Zer - Cosmic Eagleの中盤のバグり方もヤバいですね。いや、やっぱり全曲おすすめですね。
V.A - Onicrom
大爆発の結果、オニクロムと呼ばれる破壊された惑星からの破片が地球に制御されずに移動し、人間は衝突前に破片を傍受し、貴重な情報を含む16の成文化された音声を抽出しました。この音声を拡散し、破壊の可能性を防止するためにMultidimensionalクルーが選ばれました。人類、あなたはメッセージを受け取る準備ができていますか?
そういうストーリーみたいです。
12月の頭になってもMultidimensionalの常連メンバーのクオリティは向上するばかりですね。Prozyk - Floorfillaがトリッピーでスリリングな音響空間を実現しています。Saavage vs Arcek vs Vertstep - Rapazes Loucos da Raveはついにコラボしたか!という感じですね。Saavageの硬質なキックと軽やかな展開はとても聴きやすいです。今年4月にEPを出したLaserbreak - Cyber Matrixの衝突感も最高!
Black Out Records
- レーベル:Black Out Records
- 国:ドイツ
21世紀のモダン・トランス・ダンス・セレモニーに最適な音楽は何だろうか?この問いに単純な答えがないのは明らかだ。高速でハードなリズムと、キレのある効果音の連鎖構造は、インナースペースへの旅に導くための優れた媒体であることが証明されている。しかし、メロウなグルーヴとドリーミーなメロディーは、足を動かし、心を異世界に漂わせるのに効果的である。
Black Out Recはドイツのレーベルで、コンピレーションアルバムが大半を占めるMultidimensionalに比べ、こっちのほうが少しポップ寄りで各アーティストのアルバムやEPのリリースが多めです。最前線の凄腕をあつめて精力的に活動しているという点では似ています。コンピレーションはMile High Clubシリーズくらいかな。ここでフィーチャーされている各アーティストの個性はかなり自然な姿でのびのびと出ている感じで、アーティストの才能を伸ばしていこうという意思を感じます。
KiLLATK, Narxz - Digital Jungle(2020/12)
NarxzとKiLLATKの合作がシングルリリース。JungleというかNeuroFunkがHi-Techをサンドイッチする展開。すこしModern Jungleっぽいパッドも使われています。飛び道具的になっていますが、流れの一体感はちゃんとトランスでさすがです。展開もわかりやすくHi-Techに慣れていなくてもかなり聴きやすいのではないかと思います。
V.A - Mile High Club Vol.2
2020年10月にリリースされたVol.1も最高でしたが、Vol.2はそれを更に上回るパワーでした!バトル漫画みたい。1と2でジャケットが微妙に色味が違うだけなのも最高。なんだかんだ上半期はこのコンピレーションを一番聴いてたかも。Virtuanoise, Inner Coma, FELE, KILLATK, Sonic System, Spiralなど最高メンツが参加しています。音はどんどん良くなっていて、BPMも下は175から上は222と全方位攻撃な構成で最高。最高しか言えない。
Inner Coma - Decryptionは、ハイテックは情報量過多!グチャグチャ!という印象を持っている方にこそ聴いてほしい一曲。晴天をどこまでも立ち上っていくようでもあり、深い精神の奥底に爽やかに自由落下していくようでもある曲です。クリアなキックベースを軸に、淡く軽やかなメロディラインとInner Coma独特のキレのあるFMレーザーが応酬を繰り返します。Decryption――復号化。理性と感情の互いの暗号化-復号化。二項対立における存在同士の関わりというものは、自らにとって暗号化されてみえる相手を復号し続ける状態とも解釈でき、その絶え間ないプロトコル応酬の過程にこそ存在の主張が宿るように思います。2021年上半期で一番好きな曲!
Fele vs. Alien Chaos — Quantum Leapも上半期ずっと聴いてました。ロケットが打ち上がるような、ワープドライブを発動するようなイントロからどこまでも高揚感が立ち上っていきます。ハイテックはどれもSF感というかセンス・オブ・ワンダーに満ちあふれていますが、この曲はわかりやすく完全にSF映画です。
KILLATK - Wake UpはKILLATKにドハマりした一曲です。このボーカルの元ネタなんでしたっけ?くすんだネオンカラーのFutureFunkなイメージに、畳み掛けるようなキックベースに加えて中盤の空間がバグるところが絶妙にトリップのツボを抑えてきます。
Popek - A New Chapter EP
これは全曲ヤバい!Popek - Vibes Filterに続き、Popekがやっと自分の芯を掴んだなという印象です。BPMも140から180までとボーダーレスで、一曲目後半のコンプレキシトロ・エレクトロハウス感はもはや日本で人気ないわゆる「ハイテックフルオン」に接近しており、もう全部ハイテックでいいじゃんと思わず言ってしまいそう。全体的にトライバルでマッシヴな”踊れる漢のハイテック”を感じます。
KILLATK - MOSHPIT (EP)
2020年から活動が活発になってきたKILLATKのEPが出ました。彼はSpotifyだと短い映像(Canvas)を必ずつけていて、独特のフューチャーパンクな世界観が伺えます。今作はロボットの反乱がテーマみたいです。と言っても彼の一貫している作風が凝縮された4トラックなので、必聴です!
イカツイ風貌!
Spiral - Imagination Creates Reality
プレビューが出たときから超絶期待していたインドのSpiralの2ndアルバムがついに今月(12月)リリースされました!
前作TORNADO(2018)では少しハイがきつく攻撃的な印象でしたが、今作はちょっとかなり衝撃的でした!出てくる発音体の立ち騒ぎ方が非常にクリアで、サウンドエンジニアの顔も持つSpiralの実力全開という感じです。ほぼ統一された音質のキックベースに絡みつく独特の音空間、西洋のハイテックにはあまり無いようなダイナミックな展開、心の奥から高揚するようなメロディライン、ダンサブルな気持ちよさを追求したドラムパターンなど、彼の音楽に対するアプローチは大好きですね。ハイテック抜きにしても、そもそも音楽としての表現力がネクストレベルじゃないかな。内向的であると同時に外向的で、明るい未来の存在が力強く予感されるようで、アルバムとしての完成度も非常に高水準です。
誇張抜きで全曲素晴らしいので必聴です!
いい笑顔!
Warromaja Records
- レーベル:Warromaja Records
- 国:ベルギー
2012年に設立され、昨年はV.A - Psyroad, Hourgrassなどの名作コンピを次々にリリースしていたWarromaja(ワロマジャ?ワロマヤ?)RecordsもたくさんEPやアルバム、コンピレーションをリリースしました。
Narxz - Future Shenanigans (Album)
近い将来、人生はよりファストになっていく。すでに人生は速くなっているとしても、音楽はより速く、より高度になっていく。未来はまた「今」であり、未来の音は既にここにある。さあ、Narxzと一緒に未来の悪ふざけ(Future Shenanigans)をしよう。
Narxzのアルバム「Future Shenanigans」が出ました!弱冠23歳のスイスのアーティストです。TechnoやRapのサイドプロジェクトでも活動しながら、それらの要素も自然とハイテックに織り交ぜられており、プロフィールにある通り「FUCK GENRE <3」を体現しているアーティストです。アルバムは完成度高かったです!レーザーの質感が一瞬でNarxzとわかりますし、ネオンカラーに満ちた今風のレトロフューチャーなメロディラインの完成度の高さが伺えます。表題作Future Shenanigans、Is This The Funk U Want, Marijuana Addictあたりがお気に入りです。Pyrokine, Voyd Realm, Macrodoseなど2020年代に実力を伸ばし始めた新生ハイテックアーティストは数あれど、最も若々しく勢いに満ちたアーティストではないでしょうか!
V.A - Jungle Fever
常連勢に加えAngry Lunaやkokobroko, Will O Wisp, Mimic Vatといった珍しいメンバーも。Voyd Realm, Spiral - Gift of Gabのポップさとツイステッドの融合は圧巻です。
O.V.N.I Records
- レーベル:O.V.N.I Records
- 国:フランス
- 公式サイト:https://www.ovni-records.com/
OVNIも精力的にリリースを続けています。主催のNeokontrol曰く「OVNI Recordsのトラックのベースはvb-1(Steinberg Cubaseのクラシカルなベース用VSTインストゥルメント)以外を使用しないように」というお達しがあるらしく、それをもってOVNIらしさを出しています。プラグイン縛りでレーベルカラーを決めるのはなかなか気が狂ってていいと思います。
V.A - OVNI 13 (The Neverending Conspiracy)
2021/11リリースのこちらのコンピレーションはAngry Luna, Wikileadz, Revolted, Tzorkin Project, Popekなどお馴染みOVNI勢に加えてMaramba, MetaHumanなど絶妙なメンバーを取り揃えています. このコンピレーションでOVNIは一気に大人びた印象で、「UFO・Alien Invasionにフォーカスした、不穏でコミカルなレトロ・フューチャー」といったようなレーベルカラーが完全に固まったな、という印象でした。MetaHuman Vs Angry Luna - The Martians (190)のUFO観がハチャメチャにかっこいい。この曲に限らず、異世界感・侵略感を出すために微分音を使っている曲が数曲見受けられます。こういうアーティストの実験精神を受け入れる器のあるレーベルが存在し、お互いを高めあっていけているのは感嘆の一言です。
2000年代を席巻しハードテックカルチャーを形成してきたAstrofonik時代が長かったOVNI、というかNeokontrol(Neurokontrol)の策略と底力が見えてきましたね。
Hypnotic Tribe Records
hipnotictriberecords.bandcamp.com
- レーベル:Hypnotic Tribe Records
- 国:ポルトガル
2014年以降、Hi-Tech/Darkpsy/Forest/Psychedelicをリリースしています。
V.A - VINAYAKA
あまり他では見ないメンバーが多いです。各アーティストを調べてもほぼ活動していない=初参加が多い?のにクオリティはめちゃくちゃ高いです!Pyrokine, Pattern 115 - Bhoomiがやばい。
osom-music
- レーベル:osom-music
- 国:ロシア
osom-musicはロシアのKindzadzaとPsykovskyによって設立され、現在はKindzadzaが主体的に活動している、ハイテック初期の時代を作った重鎮レーベルです。今年もKindzadza EP第3弾、Will O Wispのアルバムなどと一つ一つ深さと熱量を持った作品を精力的に発表していました。
Will O Wisp - Mukashi Mukashi (Album)
IDMとトランスとブレインダンスを行き来するような、非常に内的で複雑な多次元構造を持っているかのような楽曲構造が特徴的であり、一貫してモジュラーシンセで制作を続けるWill O Wispの実に7年ぶりの最新アルバム!トリップ感覚に満ちたより濃密な異空間で、彼のコンセプティックな部分はより拡張され、より踊れるようになりました。モジュラーだからか、音が丸っこいのが特徴ですね。
Synetic Records
- レーベル:Synetic Records
- 国:デンマーク
Logic UFO - Abstract Times (EP)
ブラジルのアーティストLogic UFOのEP。どこか薄明的で不気味な独特の世界観がひたすらに提示され、見ている景色がバグり続けます。基本的になにか大きい出来事が起こるわけでもなく地味な作風なのに、音空間の処理が異常に綿密なのでボーッと聴いてると引き込まれてどこかしらに連れ去られそうで怖いです。
Hyprid Records
hypridrecordsofficial.bandcamp.com
- レーベル:Hyprid Records
- 国:オーストリア
- 公式サイト:http://www.hypridrecords.com/
VA - Universe Blast 4 - Synergy
2017年から定期的にリリースしているUniverse Blastシリーズも第4弾に。Voyd Realm, Narxz, Pyrokineなどの新人気鋭なハイテックメンバーに加え、見たこと無いアーティストも多いですね。。といってもクオリティは維持されており、結構大きい展開が多く、聴きやすいコンピレーションだと思います!Narxz - Quantum Bliss [220]の陶酔感, Divine Mantra - Man vs Machines [195]の狂った階段メロディが特に最高。新人をdigるならここHyprid RecordsとHypnotic Tribe Recordsなんですかね。
Damaru Records
Damaru Recordsは2010年代後半に精力的に活動して、現在のハイテックシーンを盛り上げる一端となった重鎮レーベルです。Darkpsyのハイテックへの正当進化といったようなレーベルカラーで、ドイツの堅実なお国柄が出ている感じですね。2020年代も着実にリリースを重ねていて偉いです。
Aquarius Orb - Reconnect EP
4つのトラックは、ねじれたグルーヴィーなサウンドで、ハイテクなサイケデリック環境にあなたをハイジャックします。THCを吸って、自分の内面と向き合いながら、"Drunken Dreams "を可能にする "Outer Space "に飛び込もう。
ブラジルのAquariusOrb(Victor Luciano)のEPが出ています。複雑なハイハットの動きが特徴的で、キレもよくめちゃくちゃ踊れます。Forest Psyの出身なのかな。筆者は2014年頃にDamaruのコンピレーションを死ぬほど聴いていたので実家のような安心感があります。最高~~!
Shamanism Records
- レーベル:Shamanism Records
- 国:ドイツ
こちらもドイツのレーベル。Yuxibuが主催です。Damaru Recordsのカラーに攻撃性と加速度が加わった感じ。実験的かつ堅実、そして熱意にあふれているというドイツのお国柄ですね。Aquarius Orb, Logic UFO, Ugly Ducky, Fractaly Noiseあたりが精力的にリリースしています。
V.A - Binary Cube
日本からEikillerさんがWhat's is Trance 190 bpmで参加。彼の軽やかなメロディラインは完全に空中飛行でカッコいいです!AquariusOrb&Logic UFO - Insane Creations - 200 bpmがどっちの色も出ていてすごすぎる!両者とも、意味の無さそうなハリボテ空間をキレと気迫で見せてくるスタイルなので、コラボしてくれて納得感がすごいです。
V.A - BATTLE ALGORYTHM
これも12月です。12月ヤバすぎ!ALRTの My Levelのリミックスありますね。
Blintra Mimoza vs Karmawave - Hysterika (195 bpm) が優しく、安定感あります。しかしArcekがマスタリングすると結構攻撃的になりますね。コンピレーションの方向性的にはぴったりだと思います。
Lyserjunks Productions
lyserjunksproductions.bandcamp.com
- レーベル:Lyserjunks Productions
- 国:インド
V.A - Spirit Gust
新生ハイテックレーベル。もともとは同名で10年以上高速なサイケデリックトランスにフォーカスしたイベントだったみたいですが、満を持して音楽レーベル化したみたいです。Noise Poison然り、こういうパーティシーンとレーベルが密接に結びついているカルチャーはとても素敵ですね。Spiral, Yatzee, Psykovsky, Arcek, Insectorなど、古参から新参まで全員います。間違いないです。Mimic Vat久々に見ましたが、アグレッシヴな突進力が加わって進化してますね。Insectorは逆に落ち着いてきて、調和の方向を追求してるみたいですね。日本からFullmoon Mondoさんもいますね!最高。
フィジカルは二枚組のCDと、USBです。
おまけ:ハイテックの歴史は始まったばかり!
Hi-Tech Trance Musicの起源は2005~2006年頃です。
ドイツのHIGHKOとスロベニアのCOSMOが、それまでのダーク・サイケデリックトランスに比べ、多い音数の組み合わせにフォーカスしたBPM150~160の音楽を作り出し、「HighTech Trance」と提唱しました*1。
ロシアのKindzadzaやPsykovskyも同時期に独特な高速ダーク・サイケデリックミュージックを作り始め、日本のダークサイケシーンでも「ロシアンダーク」などと紹介されていました。
2013年頃までは、Noise Poison RecordsやDamaru Recordsなどが全盛期で、Crazy Astronautなどの一部の時代を先取りしすぎていた未来人を除くと、この頃のハイテックは確かに今までのダークサイケの雰囲気とは一線を画すものの、未だダークな印象に引っ張られた作品が多めでした。
その後、2014-2018年の5年間にかけて、Kamino RecordsのArcek, Kasyyyk, Insector, Gotalien周辺を中心としたアーティストらがメロディックで軽やか・爽やかでありながらツイステッドな作品を多く発表し、現在のハイテックの地盤がほぼ固まっていったようです。筆者はこの時代が現在のハイテクトランスの黎明期だと考えています。その後はインドやメキシコ、ヨーロッパ全体を中心にニューカマーが加速度的に増え続けている状況です。
それまでの、印象としてはまさにダーク・ドロドロなダークサイケに比べ、ハイテックはそのような特定の世界観に必ずしも固定されていません。曲の最初と途中と終わりで全く違うアトモスフィアを提示することもできちゃいます。このあたりは昔のハードテックっぽいですね。「Psytrance Guide」にて、ハイテックは「すべてのサイケデリックトランスのジャンルの中で最も予測不可能である」とされていますが、170~の高BPMの持つグルーヴ・展開の速さと上手く噛み合ったことでこのようなツイステッド・マインドな側面が強調されていったと、筆者は考えています。
筆者Dustvoxxは、この先のハイテック-高BPMのトランスの世界は今以上に一層勢力を拡大していくだろうと確信しています。この音楽のもつ面白さ、楽しさはほとんど次世代的で、Ozora Festivalのハイテックフロアの拡大やメキシコのHi-Tech RevolutionなどのHi-Techオンリーフェスティバルの勃興、また海外のフェスのお客さんも10代が中心といったように、時代性なども鑑みると本当にボーダーレスかつフラットな価値観を持つ今の世代といったエネルギーを感じます。コロナの影響で世界的にオンラインフェスが流行ったのもこの一端を担ったのかなと思います。
ここからもっと多くのアーティスト、DJ、リスナーが増えていくことを切に願います!
ここまで、2020~2021年における主要なリリースや、レーベル、アーティストを長々と紹介し続けて来ました。レーベルに紐付ける構成で書き始めましたが、このスタイルだと個人リリースのアーティストなど、紹介できなかった曲が多々ありますね・・・気になったアーティストがいたら、ぜひSpotifyやBandcampで探してみてください!
ここ最近のハイテックは軽やかさ・爽やかさが通底していますが、各アーティストらのサイケデリックに対する新しいアプローチの探究心・実験精神が止まらず、トランスミュージック以外のあらゆるジャンルの側面を取り込んで発展し続けています。(特に2021年後半におけるキックの質感と展開を鑑みると、ハードコアシーン・ハードテックシーン・フレンチコアシーンとも融合していく可能性が高いと考えています。)本当に各々のアーティストの個性が全面的に爆発しているジャンルだと思います。
ハイテックに初めて触れると一見ノイジーでめちゃくちゃな音楽に聴こえるかもしれませんが、SpiralとPyrokineが"We make music not noise"と言う通り、ここまで読んで聴いてくれたあなたはそうではないことが十分に分かっているはずです!その一つ一つの繊細な音響パーツのバランス、綿密な曲構成、ダンサブルなベースライン、ツイステッドでクレイジーな世界観などなどが分かると、波に乗るように一気にこの世界観にハマること間違いなしです!
Hi-Tech Tranceの世界は本当に今始まったばかりです!
大切なのは、音楽を信じて全面的に身を委ねること、すなわち、トランスすること!
執筆協力:
音楽雑記#1
2018年のRichard Devineの"Sort/Lave"を聴き直していた。
異空間の宇宙人の機械の収縮/律動のようないつものノリが、Max/mspメインだった2012年の前作”RISP”から6年かけて全編モジュラーシンセによりアップデートされている。
Richard Devineは直接的にはAutechreからの影響が強いアーティストと言われる。緻密なビートと伸縮するようなリズムにそれは現れている。しかし、2001年のアルバム"Aleamapper"から今作"Sort/Lave"に至るまで、音響彫刻的な表現は洗練されていったものの、どのようなストーリーで織りなしていくかという感覚は驚くほど変化していない。映画的断片の寸劇が切り刻まれ融合していくスキットのような表現か、初めに設定された正確なビートが崩壊を辿る過程に宿る複雑性を魅せるかのどちらかである。時間は常に一方向へと進んで行き、回帰は滅多に起こらない。
初期Richard Devineに影響を受けた僕は、テクノ的なダンスミュージックを知る前に、この音の生成変化の精神風景とも言える表現を強く受け継いでしまった。故に、リズムというものの役割が、メタ的にダンスの枠組みを超えるという感覚がしばしば僕の曲には宿り、これが良くも悪くも、僕の曲を強く特徴づけている。
リズムは僕にとって、ダンスを目的とするという以上に音の生成変化の時間軸を与える要素である。時間軸の提示は漫画におけるコマ的な役割を果たす。だから時間軸性を強調するために無機的なビートを好む傾向にあるのかもしれない。さらに言うと、そのコマすらも内容と結合して、有機的に破壊とクリエイション(生成変化)したい。ウルトラヘヴンのように。
ここでの「生成変化」とは哲学者アンリ・ベルクソンのアイデアをもとに、哲学者ジル・ドゥルーズが発展させた概念であるが、日本では千葉雅也氏がドゥルーズの研究者として名高いだろう。千葉氏によると、生成変化の理論に見出されるのは、事物そのものというよりも、事物同士の関係が変化する様である。その点を千葉氏は、「関係の外在性テーゼ」として明確に定式化する。ドゥルーズの言葉を借りれば、Richard Devineの音響的生成変化においては、サウンド同士は常に「仮固定」され、エントロピーは自然法則に従って増大する。つまり複雑性を帯びていくのであり、組織体から一度開放された音は外在化し戻ってくることはない。このカオティックな変化を計算づくで制御し切る要素が、ディヴァインのどこか数学者や科学者のようなトラックを印象づけている。
さて、Richard Devineはしばしば「IDM」というジャンルの筆頭アーティストとされる。Warp RecordsがAIシリーズをリリースした1993年頃から、ポストレイヴサウンドの一つとして注目された。IDMとは「インテリジェント・ダンス・ミュージック」の略称であるが、必ずしもそこに「ダンス」は在り続けていない。Detroit Undergroundの作品など、2010年代以降のIDMはモジュラーシンセサイザの台頭で音は良くなっているが、それが 前述した2005年頃までの音響風景的な表現の洗練に留まってしまっているのが正直な印象である。音響風景・音響彫刻的な表現はどんどんダンスミュージックと融合したほうが発展できる筈である。ダンス・ミュージックとは、つまるところリズムのグルーヴと調和であり、時間軸を提示する要素だけではないことに、最近の僕は強く関心を向けている。
最近の僕は、ダンスミュージックは説明の余地がある音楽という感じがしてきている。敢えて余地を残していて、オーディエンスは踊ることで、身体表現として音楽に介入して表現が完成に近づくのではないか、と思う。(無論、音楽表現は須らく「仮固定」ではあるが。)一体、ダンス、リズムとは如何なるものであるのか。気持ちの良いグルーヴを作りたいことと、それで自然に踊りたくなることは自分にとって相関している。だからダンスの身体的エクスタシーの果てに脳内に発生する何かの追求も、同じくらいの興味がある。つまり、肉体的な運動を通じてエクスタシーに到達するのか、思考の抽象的な運動が肉体的なエクスタシーを生じさせるのか、である。(この二つが止揚する概念としてのAphex Twinの提唱するBraindanceがあると思っている。)
肉体をリアルに動かすことと、思考における抽象的な運動。後者を中心にして前者を包摂してしまうような考えはあるが、やはりそれでは捉えきれない肉体の問題がある。これは音楽に対して、解釈/咀嚼する思考的介入をするのか、ダンス=身体的介入をするのか、とも言いかえられる。音楽を受け取る行為とは究極、精神と肉体のどちらに収斂するのかという議論自体が円環的であり、無意味に過ぎないのかもしれない。「超越論的なものが生理学的ないしは経験論的なものに回収されるならもう筋トレするしかない」というはるしにゃんのツイートを思い出す。
超越論的なものが生理学的ないしは経験論的なものに回収されるならもう筋トレするしかない
— † (@hallucinyan) 2015年7月17日
Hi-Tech頂上決戦 2019~2020
いま、ハイテックがアツい!
だけどもどうやってアーティストDigしていいのかわからない!
ということで2019~2020にかけてリリースされたコンピレーションを中心に、世界各地に散らばっているHi-Techのレーベルやアーティストを独断と偏見で紹介していこうと思います。間違いがあればお詫びして歓迎いたしますのでコメントで。随時更新中。
主要レーベル:
Freak Records
Hyperactive 25の主催するスイスのレーベル。OxidaksiのManifestationがBPM170~180で展開もわかりやすくDJでも使いやすい洗練された一枚になっています。
CDやシャツなどのグッズ制作にも精力的です。ゴア/サイケデリックトランスのCDを専門に扱う日本のオンライン・レコードショップ BRAVO RECORDSでも頻繁にここのレーベルのCDが紹介されています。
Multidimensional Music
www.multidimensional-music.com
最近(2020/8月時点)最も勢いがあると言っても過言ではないメキシコのレーベル。Arcekがコンパイルしています。V.A - Labyrinth(2020)が名作!
この夏にAcid Methods, Shiva Robotと名作コンピを続々リリースしていてすごい。
大ネタEDMをぐちゃぐちゃにするスタイルで頑張るArcekとSpiralのユニットFLOSSY WAVESのファーストアルバムFUNKY FEELINGもここからリリース。DJでも使いやすい。
Kamino Records
Kashyyykの主催するメキシコのレーベル。Arcek, Kashyyyk, Insector, Spiral, Xenrox, Calabi Yau, Inner Coma, Mimic Vatとユーロ周辺のハイテックツヨメンツが勢揃い。InsectorやSpiral, Gotalienのアルバムはここから出ています。
V.A - Hi-Tech NationなどDJでも使いやすい安定した170~210BPMの楽曲が多め。シャツとかも売ってますが今はCOVID-19の影響で出荷停止している様子。
O.V.N.I Records
忘れちゃいけないO.V.N.I Records!
フランスのAstrofonikでハードテックシーンに偉大な功績を残したNeurokontrolがはじめたサブレーベルだったのが、ハードテックのフェス化に伴いこっちがメインになってしまった。最初は過去のハードテックのリミックスが多めだったのが、Inner Coma, Paralocks, Insector, Popekなどユーロ勢も巻き込んでどんどんカオティックに。
2015年にAngry Luna, Lunaraveたちと日本ツアーをしていました。
ハイテックにしては静かめの、キックに重点を置いた踊りやすいレーベルカラーが特徴。日本からはYoshihiro氏、JunxPunx氏、筆者Dustvoxxもリリースしています。
さすがオブニーレコードだぜ!
Pleiadian Records
https://pleiadianrecords.bandcamp.com/
メキシコのレーベル。変な曲が多い。日本からMaleficium氏もアルバムリリースしている。V.A - Star Being 2にはオールドスクール・マイアミベース/IDM芸人ことOtto Von Schirachのリミックスもあってびっくり。Zombie Scream, Anubis, Will O' WispとGlosolaliaのユニットQuantum Mechanicaなどのリリースが多いのはここ。
Dark Prisma Records
Dark Prisma Recordsは、前衛的で、心と魂を揺さぶる音楽を地球上に発信するプラットフォームです。サイケデリックトランスとして知られているものの境界線と可能性を拡張した、次世代のオーラルトランスミッションを創造する新世代のアーティストをホストするように設計されています。
私たちの目的は、音、技術、知識を使って、私たちの意識を拡張しアップデートすることで、私たちが宇宙と呼んでいるこの自己変革、自己認識の機械である創造の無限のプロセスに貢献することです。私たちは、未知の世界の深みに潜り込み、彼らの研究と旅の様子をサウンドでレポートして帰ってくる音の探求者のための避難所としての役割を果たしたいと考えています。(deepL)
アルゼンチンのレーベル。Will O Wisp、Quantum Mechanica、Frantic Noiseのアルバムリリースはこちら。
2011年のV/A Blueprintsが名盤でした。
ADN Music
ハイテックだけじゃないけどLOVE STORIES - The Fall/The Conquestが良かったのでこちらも紹介。フランスのレーベル。前述のアルバムはフラれた経験をサイトランス/ハイテックにコンパイルするという、愛を再発見する二枚組の紙ジャケット。通して聴いてください。
IDM, Experimentalも含んだサブレーベルがいくつかあります。
Peyotech Crew
https://peyotechcrew.bandcamp.com/
HyperAdmin主催のドイツのレーベル。最近はあまり活動していないが2019/3にリリースされたV.A - Let's Try Hi-Techの熱量がすごい。BPMは250近いものもあって結構エクストリーム。変な曲が多い。
オタクハイテックを作ってくれるMinDelveやメタル出身のSpaceChimpなどもこちら。
MetaDimension Music
metadimensionmusic.bandcamp.com
インドのレーベル。2019年後半にかけてV.A - Rhythmic RascalsやV.A - Interstellar Distractions 2など、名作コンピをリリースしていたが急にリリース止まってしまった。大丈夫かしら・・・KopophobiaやSpaceChimpなど、変態ハイテックメンバー多数。
Black Out Records
DJ Psycko創設者のドイツのレーベル。ポストCrazy Astronautっぽいハイテック新星メンツ、QuantikoやPopekをデビューさせた。ドイツのAntagon, Twisted Psychologyのアルバムもここからリリース。
Cosmic Crew
インドのレーベル。BPM150とか遅めのも多い。変な曲がいっぱいある。
Synetic Records
たぶんKashyyyk主催のデンマークのレーベル。変な曲がたくさんある。V.A - Energy Conductorがすごい。
Popol-Vuh Records
MinDelve, Kokobloko, Kopophobia, AkAPSyCJなどBPMがナチュラルに変わる曲も多い、おもしろハイテック多数のメキシコのレーベル。BPM140くらいからBPM380くらいまで(!)までを網羅している。マスタリングは同じメキシコのArcekに頼んでいるみたい。
ここからはちょっとシリアスめでBPM遅めのハイテックも多いレーベルを紹介。
Damaru Records
ドイツのレーベル。ドイツ多いですね。ハイテックシーンには珍しいUKのユニットLoose Connection(筆者のイチオシです)とか、高BPMのハイテックに多い嘘のファンキーっぽさは抑えられたシリアス、渋めな音が多いです。
Free Radical Records
beatspacefreeradical.bandcamp.com
結構昔からある。 Loose Connectionの昔のリリースがだいたいここ。キックが弱くて音が今のデジタルチックに洗練されきっておらず、サンプリングも多めの実験的な2012~2016年頃のリリースが多くて個人的には大好き。
最後の方投げやりになってしまいましたがまた随時追記していきます。
アーティストのリリースはほぼBandcampですね。各レーベルやアーティストのFacebookとSoundcloudを見るのが一番おすすめです。
最後に筆者のリリースしたEPも貼っておきます。